口の動きを読み取る-その2- [コミュニケーション]
読み取ったひとつひとつの音を単語としての認識につなげるにはどうすればいいのでしょうか。
たとえば、聞こえる母親が聞こえない子供に向かって「きれいなお花が咲いているね」と話しかけたとします。
(* ここでは、幼児相手のコミュニケーションを想定しています)
このとき、子供は下の順番でひとつひとつの音を単語としての認識につなげていきます。
1. 母親の口形から不完全ながらもひとつひとつの音を読み取る
2. 読み取った音をもとに頭の中で適切な単語を探し出す
3. ひとつひとつの音を適切な単語に置き換える
ここでキーポイントとなるのは、母親が発した話を構成する「きれいな」「お花」「が」「咲いている(ね)」の単語の概念を子供が知っているかどうか、です。
これらの単語の概念が子供の頭のなかにあらかじめ入っていることで、単語としての認識が可能になり、延いては、一つの文章としての認識が可能になります。
子供の方で1つも知らない単語があると、子供は母親が発した話を意味をなさない音の集まりとして受け取ります。つまり、子供には母親が暗号を喋っているように見えるということです。
このように、ひとつひとつの音を単語として認識するわけですが、単語としての認識は、教育機関で適切な訓練を行うことによってできるようになります。
訓練は、音の読み取りと語彙習得の二本立てで行われますが、多くの教育機関では乳幼児期(以前)に聴覚機能が低下した状態にある聴覚障害児を対象にしているため、語彙習得に大きな比重が置かれています。
#まれに、小学生になってから難聴が判明した聴覚障害児が訓練を受けるケースもあります。
なぜ、語彙習得に大きな比重が置かれているのでしょうか。
それは、難聴が判明した時点での語彙数が同年代の健聴の子供(知的障害児は除く)に比べて非常に少ない傾向にあるからです。
健聴で知的発達に問題がなければ、1歳で一語文、1-2歳で二語文が話せるようになるといわれています。
日頃、周囲の人達(特に、家族)から大量の言葉のシャワーを浴びることで語彙数を蓄積していった乳幼児は、発音は不完全ながらも意味のある言葉を発するようになります。
一方、乳幼児期(以前)に聴覚機能が低下した難聴児のうち、程度が重い乳幼児は、浴びた言葉の数が少ないかゼロです。よって、語彙数の蓄積量も非常に少ないかゼロです。
難聴の程度が軽い乳幼児の場合、周波数の音域の聞こえ方によっては、健聴の子供とあまり変わらない子供もいますが、そのような子供はまれです。
言葉を浴びる段階で、浴びた言葉に少しでも漏れがあると自分のモノにすることは大変難しいのです。
そして、そのことは語彙数の蓄積量にもかなり影響を及ぼし、乳児期にはあまり問題にならなかった蓄積の少なさが幼児期に言語発達の遅れとして表面化してきます。
したがって、音を読み取る前提として、語彙数の蓄積にかなりの時間を割くことになります。
しかし、語彙数を蓄積させる訓練が単語としての完全な認識につながるわけではありません。
認識力を高めるには、現時点での聴力を生かし、ハッキリと話してくれる人の唇の動きを読み取る経験を数多く重ねることが必要ですが、周囲の人がどう接するかによって、認識力に個人差が出てしまうのです。
なお、周波数の会話音域の聞こえ方が良い難聴者ほど、語彙数をかなり蓄積させれば、単語のスムーズな認識が可能になる傾向があります。
(終わり)
たとえば、聞こえる母親が聞こえない子供に向かって「きれいなお花が咲いているね」と話しかけたとします。
(* ここでは、幼児相手のコミュニケーションを想定しています)
このとき、子供は下の順番でひとつひとつの音を単語としての認識につなげていきます。
1. 母親の口形から不完全ながらもひとつひとつの音を読み取る
2. 読み取った音をもとに頭の中で適切な単語を探し出す
3. ひとつひとつの音を適切な単語に置き換える
ここでキーポイントとなるのは、母親が発した話を構成する「きれいな」「お花」「が」「咲いている(ね)」の単語の概念を子供が知っているかどうか、です。
これらの単語の概念が子供の頭のなかにあらかじめ入っていることで、単語としての認識が可能になり、延いては、一つの文章としての認識が可能になります。
子供の方で1つも知らない単語があると、子供は母親が発した話を意味をなさない音の集まりとして受け取ります。つまり、子供には母親が暗号を喋っているように見えるということです。
このように、ひとつひとつの音を単語として認識するわけですが、単語としての認識は、教育機関で適切な訓練を行うことによってできるようになります。
訓練は、音の読み取りと語彙習得の二本立てで行われますが、多くの教育機関では乳幼児期(以前)に聴覚機能が低下した状態にある聴覚障害児を対象にしているため、語彙習得に大きな比重が置かれています。
#まれに、小学生になってから難聴が判明した聴覚障害児が訓練を受けるケースもあります。
なぜ、語彙習得に大きな比重が置かれているのでしょうか。
それは、難聴が判明した時点での語彙数が同年代の健聴の子供(知的障害児は除く)に比べて非常に少ない傾向にあるからです。
健聴で知的発達に問題がなければ、1歳で一語文、1-2歳で二語文が話せるようになるといわれています。
日頃、周囲の人達(特に、家族)から大量の言葉のシャワーを浴びることで語彙数を蓄積していった乳幼児は、発音は不完全ながらも意味のある言葉を発するようになります。
一方、乳幼児期(以前)に聴覚機能が低下した難聴児のうち、程度が重い乳幼児は、浴びた言葉の数が少ないかゼロです。よって、語彙数の蓄積量も非常に少ないかゼロです。
難聴の程度が軽い乳幼児の場合、周波数の音域の聞こえ方によっては、健聴の子供とあまり変わらない子供もいますが、そのような子供はまれです。
言葉を浴びる段階で、浴びた言葉に少しでも漏れがあると自分のモノにすることは大変難しいのです。
そして、そのことは語彙数の蓄積量にもかなり影響を及ぼし、乳児期にはあまり問題にならなかった蓄積の少なさが幼児期に言語発達の遅れとして表面化してきます。
したがって、音を読み取る前提として、語彙数の蓄積にかなりの時間を割くことになります。
しかし、語彙数を蓄積させる訓練が単語としての完全な認識につながるわけではありません。
認識力を高めるには、現時点での聴力を生かし、ハッキリと話してくれる人の唇の動きを読み取る経験を数多く重ねることが必要ですが、周囲の人がどう接するかによって、認識力に個人差が出てしまうのです。
なお、周波数の会話音域の聞こえ方が良い難聴者ほど、語彙数をかなり蓄積させれば、単語のスムーズな認識が可能になる傾向があります。
(終わり)
口の動きを読み取る-その1- [コミュニケーション]
これまでの記事で、多くの聴覚障害者は会話で話し手の口の動きを読み取っていることについて少し触れてきましたので、今回は、その「読唇法」について説明します。
聴覚障害者が健聴者と話しているのを何度か目にしたことのある人や聴覚障害者本人と話したことのある人なら、「口の動きを読むだけで全ての話が分かるんだ」とお思いになった人も多いかもしれません。
が、実際は、口の動きだけで100パーセント理解するのは不可能なことです。
程度こそ違いはありますが、多くの聴覚障害者は、次で挙げる基本口形と補聴器で聞こえてくる音を手がかりにして口の動きを読み取っています。
基本口形は母音の「あ(a)」「い(i)」「う(u)」「え(e)」「お(o)」ですが、
あ(a) の場合、大きく口の形が開きます。
い(i)・う(u) は、あ(a)とは逆に、口の開きが小さくなります。
い(i) は口は閉じていないが、歯を少し見せるような感じ。
う(u) は口を少しすぼめます。
え(e)・お(o) は、あ(a) 同様、口の開きが大きくなりますが、開き方が あ(a) とは少し違います。
あ(a) は口の形が縦横に大きく広がるのに対し、え(e) は口の形が横に広がります。また、お(o) は、口の形が縦に広がります。
これらの基本口形は子音においても同じです。
子音の場合、たとえば、「か(ka)」「さ(sa)」「た(ta)」は、アルファベットの「ka」「sa」「ta」が示すように、子音の「k」「s」「t」と母音の「a」の組み合わせで成り立っていますが、出す音が違うだけで、基本口形は同じです。
聴覚障害者が「か」と口形で正しく認識するには、
1. 口の形が大きく開いていることから「あ」と読み取る
2. 補聴器で子音の「k」を正しくキャッチする
ことが必要ですが、2.で子音の「k」を正しくキャッチするには、会話音域である1000ヘルツ~2000ヘルツ程度の音が補聴器で正常に近い状態で聞こえることを要します。
しかし、感音性難聴の聴覚障害者で会話音域が正常に近い状態で聞こえている人は、難聴の程度が軽い人がほとんどです。
程度が重い人はどのようにして口の動きを読み取っているのでしょうか。
彼らは、話し手の口が大きく開いていれば、
『 これは、「あ」「か」「さ」「た」・・・のどれかだな 』
というふうに、推測しながら読み取っていると思います。
なかには、話し手の口形を見ながら、補聴器で耳に伝わってくる"音の感触"、具体的には、
・音が破裂するような感じか?
・音が震えるような感じか?
・音がふわふわした感じか?(柔らかい感じか?)
・音が跳ねるような感じか?
などを手がかりにしながら読み取っている人もいます。
なぜ、"音の感触"で口形を読み取るのが可能なのでしょうか。
それは、幼児期の発音訓練で「この音は震えるような感じなんだよ」などと身体を使って学んでいるからだと考えています。
このように、多くの聴覚障害者はひとつひとつの音を読み取っているわけですが、音の読み取りがそのまま単語としての認識につながるわけではありません。
(その2に続く)
聴覚障害者が健聴者と話しているのを何度か目にしたことのある人や聴覚障害者本人と話したことのある人なら、「口の動きを読むだけで全ての話が分かるんだ」とお思いになった人も多いかもしれません。
が、実際は、口の動きだけで100パーセント理解するのは不可能なことです。
程度こそ違いはありますが、多くの聴覚障害者は、次で挙げる基本口形と補聴器で聞こえてくる音を手がかりにして口の動きを読み取っています。
基本口形は母音の「あ(a)」「い(i)」「う(u)」「え(e)」「お(o)」ですが、
あ(a) の場合、大きく口の形が開きます。
い(i)・う(u) は、あ(a)とは逆に、口の開きが小さくなります。
い(i) は口は閉じていないが、歯を少し見せるような感じ。
う(u) は口を少しすぼめます。
え(e)・お(o) は、あ(a) 同様、口の開きが大きくなりますが、開き方が あ(a) とは少し違います。
あ(a) は口の形が縦横に大きく広がるのに対し、え(e) は口の形が横に広がります。また、お(o) は、口の形が縦に広がります。
これらの基本口形は子音においても同じです。
子音の場合、たとえば、「か(ka)」「さ(sa)」「た(ta)」は、アルファベットの「ka」「sa」「ta」が示すように、子音の「k」「s」「t」と母音の「a」の組み合わせで成り立っていますが、出す音が違うだけで、基本口形は同じです。
聴覚障害者が「か」と口形で正しく認識するには、
1. 口の形が大きく開いていることから「あ」と読み取る
2. 補聴器で子音の「k」を正しくキャッチする
ことが必要ですが、2.で子音の「k」を正しくキャッチするには、会話音域である1000ヘルツ~2000ヘルツ程度の音が補聴器で正常に近い状態で聞こえることを要します。
しかし、感音性難聴の聴覚障害者で会話音域が正常に近い状態で聞こえている人は、難聴の程度が軽い人がほとんどです。
程度が重い人はどのようにして口の動きを読み取っているのでしょうか。
彼らは、話し手の口が大きく開いていれば、
『 これは、「あ」「か」「さ」「た」・・・のどれかだな 』
というふうに、推測しながら読み取っていると思います。
なかには、話し手の口形を見ながら、補聴器で耳に伝わってくる"音の感触"、具体的には、
・音が破裂するような感じか?
・音が震えるような感じか?
・音がふわふわした感じか?(柔らかい感じか?)
・音が跳ねるような感じか?
などを手がかりにしながら読み取っている人もいます。
なぜ、"音の感触"で口形を読み取るのが可能なのでしょうか。
それは、幼児期の発音訓練で「この音は震えるような感じなんだよ」などと身体を使って学んでいるからだと考えています。
このように、多くの聴覚障害者はひとつひとつの音を読み取っているわけですが、音の読み取りがそのまま単語としての認識につながるわけではありません。
(その2に続く)
難聴の程度について [難聴について]
難聴の程度は音の強さを示すデシベル(dB)という単位を用い、「聴力」という言葉で表現されます。
聴力の程度は、病院やリハビリテーションセンター等で実施されている聴力検査で知ることができます。(*1.)
*1. 健康診断でも聴力検査が実施されていますが、聞こえに異常が生じていないかを調べる目的での実施なので、難聴の程度がどれ位かを知るのは非常に難しいと思います。
さて、聴力検査ではどのようにして聴力を調べているのでしょうか。
聴力検査では、周波数別の「ビッビッ」「ブッブッ」「ボッボッ」という音を聞いて、どの位の強さ(大きさ)の音がやっと聞こえるのかを細かく調べていきます。
聴力は、周波数のうち会話音域である500ヘルツ、1000ヘルツ、2000ヘルツに対する聴力(デシベル値)を中心に、次の算出方法で算定します。
1. 「500ヘルツに対する聴力」と「1000ヘルツに対する聴力を2倍したもの」と「2000ヘルツに対する聴力」の合計を出します。
2. 1.で出した合計を『 4 』で割ります。
3. 2.で出した数値が、現時点での聴力レベルです。(一般的には、〇デシベルと表現されます。)
聴覚が正常な場合は、デシベルの数値は0(ゼロ)デシベル近辺ですが、難聴の程度が強くなるに従って、デシベルの数値は上がっていきます。
一般的に、20~50デシベルが軽度難聴、51~80デシベルが中等度難聴、81~100デシベルが高度難聴、100デシベル以上が重度難聴(ろう)といわれています。
聴力検査で測定できるのは、130デシベルまでの音ですが、130デシベルの音が聞こえない場合は測定不能となり、「スケールアウト」として表現されます。
ご参考までに、身近な音の聞こえとデシベル数値の関係を以下で大まかに示します。
■20デシベル
会話が聞き取りにくい。聞き間違うことがある程度。
ただし、普通の会話では不自由がない。
■40デシベル
一対一の会話ではさほど困難ではないが、3~5メートル以上離れた場合や集団で話し合う場合は、普通の話し声での聞き取りが困難。
■60デシベル
大声で話していただければやっと聞き取れる。
1メートルほど離れた会話は可能だが、聞き間違いが多い。
■70デシベル
耳元でいえば会話は可能。
比較的近いところでの大きな音(踏切の音など)は聞こえる。
■80~90デシベル
電車がホームに入る時に発される音がやっと感じられる。
耳元の大声はかすかに聞こえる(人によっては聞こえないことも)。
■90~100デシベル
相当大きな物音にも気づかないことがある。
■120デシベル
飛行機の爆音がやっと感じられる程度。
聴力の程度は、病院やリハビリテーションセンター等で実施されている聴力検査で知ることができます。(*1.)
*1. 健康診断でも聴力検査が実施されていますが、聞こえに異常が生じていないかを調べる目的での実施なので、難聴の程度がどれ位かを知るのは非常に難しいと思います。
さて、聴力検査ではどのようにして聴力を調べているのでしょうか。
聴力検査では、周波数別の「ビッビッ」「ブッブッ」「ボッボッ」という音を聞いて、どの位の強さ(大きさ)の音がやっと聞こえるのかを細かく調べていきます。
聴力は、周波数のうち会話音域である500ヘルツ、1000ヘルツ、2000ヘルツに対する聴力(デシベル値)を中心に、次の算出方法で算定します。
1. 「500ヘルツに対する聴力」と「1000ヘルツに対する聴力を2倍したもの」と「2000ヘルツに対する聴力」の合計を出します。
2. 1.で出した合計を『 4 』で割ります。
3. 2.で出した数値が、現時点での聴力レベルです。(一般的には、〇デシベルと表現されます。)
聴覚が正常な場合は、デシベルの数値は0(ゼロ)デシベル近辺ですが、難聴の程度が強くなるに従って、デシベルの数値は上がっていきます。
一般的に、20~50デシベルが軽度難聴、51~80デシベルが中等度難聴、81~100デシベルが高度難聴、100デシベル以上が重度難聴(ろう)といわれています。
聴力検査で測定できるのは、130デシベルまでの音ですが、130デシベルの音が聞こえない場合は測定不能となり、「スケールアウト」として表現されます。
ご参考までに、身近な音の聞こえとデシベル数値の関係を以下で大まかに示します。
■20デシベル
会話が聞き取りにくい。聞き間違うことがある程度。
ただし、普通の会話では不自由がない。
■40デシベル
一対一の会話ではさほど困難ではないが、3~5メートル以上離れた場合や集団で話し合う場合は、普通の話し声での聞き取りが困難。
■60デシベル
大声で話していただければやっと聞き取れる。
1メートルほど離れた会話は可能だが、聞き間違いが多い。
■70デシベル
耳元でいえば会話は可能。
比較的近いところでの大きな音(踏切の音など)は聞こえる。
■80~90デシベル
電車がホームに入る時に発される音がやっと感じられる。
耳元の大声はかすかに聞こえる(人によっては聞こえないことも)。
■90~100デシベル
相当大きな物音にも気づかないことがある。
■120デシベル
飛行機の爆音がやっと感じられる程度。
難聴の程度には個人差がある [難聴について]
前回の記事「難聴とは?」で感音性難聴の程度は個人差があると書きましたので、今回はその説明をします。
感音性難聴の程度は大きく分けて、軽度、中等度、高度~重度の三つがあります。
-程度によって異なる症状-
1. 軽度~中等度
軽度~中等度の場合、音量についてはあまり問題ありませんが、ひとつひとつの言葉が聞き取れない、間違って聞き取ってしまうという症状があるようです。(*1.)
*1. 私自身が高度~重度難聴で、軽度~中等度難聴を経験していないため、曖昧な表現で記述しています。
これらの症状は、補聴器をかけ、多少不明瞭に聞こえる箇所があっても、普通の人の聞こえに近い状態になることで、軽減されます。静かな場所で一対一で話す分にはさほど支障がないかと思います。
但し、会議など多人数で話し合う場所では、発言者が喋っていることがよく理解できないという問題があるようです。また、軽度~中等度難聴者は、普通の人同様に話すことができるために、「補聴器をかければ、何でも聞こえる」と誤解されがちです。
2. 高度~重度
高度~重度の難聴の場合、軽度~中等度と違い、補聴器をかけても普通の人の聞こえに近い状態になることはまずありません。
よって、自分の耳で聞き、声を出して話すことが大変困難になります。「声を出して話すこと」においては、難聴になった年齢で個人差がありますが、生まれつき、あるいは、音声言語獲得時期以前(乳児期~3歳位)に病気・事故などで難聴になった人は、話せるようになる目的で、幼児期~学童期に専門教育機関(*2.)で発話訓練を受けます。
*2. 専門教育機関は、ろう学校、地方自治体が管轄している福祉施設、大学病院の耳鼻科に設置されている訓練施設が中心。
一方、小学生以降に難聴になった人は、難聴になる前と変わりなく話せるので発話訓練を受けないのが一般的です。自分で気づかないうちに話し声が大きくなっているなど声量を調整できないという問題が出てきますが。
先に、生まれつき、あるいは、音声言語獲得時期以前に高度~重度難聴になった人は発話訓練を受けると説明しましたが、発話訓練で普通の人と同程度に話せるようになった人は少数です。残りは、発話訓練で努力しても普通の人同様に話せるようにはなりません。不明瞭な発音でたどたどしいながらも何とか自分の口で話している人が大多数です。
たとえは悪いですが、かつて車椅子に乗っていた人が、今では自分の足で立って何とか歩いている(足をひきずるような感じで)のと同じだと思ってください。
不明瞭な発音を聞いた経験がある方の中には「なぜ発音を良くする努力ができないのだろう」と思った方もいるのではないかと思いますが、このような現実があるということをご理解いただければと思います。
これで、感音性難聴に関する説明はおしまい。
感音性難聴の程度は大きく分けて、軽度、中等度、高度~重度の三つがあります。
-程度によって異なる症状-
1. 軽度~中等度
軽度~中等度の場合、音量についてはあまり問題ありませんが、ひとつひとつの言葉が聞き取れない、間違って聞き取ってしまうという症状があるようです。(*1.)
*1. 私自身が高度~重度難聴で、軽度~中等度難聴を経験していないため、曖昧な表現で記述しています。
これらの症状は、補聴器をかけ、多少不明瞭に聞こえる箇所があっても、普通の人の聞こえに近い状態になることで、軽減されます。静かな場所で一対一で話す分にはさほど支障がないかと思います。
但し、会議など多人数で話し合う場所では、発言者が喋っていることがよく理解できないという問題があるようです。また、軽度~中等度難聴者は、普通の人同様に話すことができるために、「補聴器をかければ、何でも聞こえる」と誤解されがちです。
2. 高度~重度
高度~重度の難聴の場合、軽度~中等度と違い、補聴器をかけても普通の人の聞こえに近い状態になることはまずありません。
よって、自分の耳で聞き、声を出して話すことが大変困難になります。「声を出して話すこと」においては、難聴になった年齢で個人差がありますが、生まれつき、あるいは、音声言語獲得時期以前(乳児期~3歳位)に病気・事故などで難聴になった人は、話せるようになる目的で、幼児期~学童期に専門教育機関(*2.)で発話訓練を受けます。
*2. 専門教育機関は、ろう学校、地方自治体が管轄している福祉施設、大学病院の耳鼻科に設置されている訓練施設が中心。
一方、小学生以降に難聴になった人は、難聴になる前と変わりなく話せるので発話訓練を受けないのが一般的です。自分で気づかないうちに話し声が大きくなっているなど声量を調整できないという問題が出てきますが。
先に、生まれつき、あるいは、音声言語獲得時期以前に高度~重度難聴になった人は発話訓練を受けると説明しましたが、発話訓練で普通の人と同程度に話せるようになった人は少数です。残りは、発話訓練で努力しても普通の人同様に話せるようにはなりません。不明瞭な発音でたどたどしいながらも何とか自分の口で話している人が大多数です。
たとえは悪いですが、かつて車椅子に乗っていた人が、今では自分の足で立って何とか歩いている(足をひきずるような感じで)のと同じだと思ってください。
不明瞭な発音を聞いた経験がある方の中には「なぜ発音を良くする努力ができないのだろう」と思った方もいるのではないかと思いますが、このような現実があるということをご理解いただければと思います。
これで、感音性難聴に関する説明はおしまい。
難聴とは? [難聴について]
前回の記事では「耳が聞こえない人」「耳が聞こえにくい人」について説明しました。
そこで、今回は「耳が聞こえない」「耳が聞こえにくい」を引っくるめていう難聴について説明します。
-耳の構造と「難聴」-
耳の構造は、体の外の音を振動に変えて体内に伝える役割をもつ伝音器(*1.)と、体内に取り込んだ振動を電気信号に変換して脳に伝える役割をもつ感音器(*2.)に分かれますが、これらが正常に機能して初めて「耳が聞こえる」といえるのです。
*1.伝音器は、外耳から中耳にかけての各器官(外耳道・鼓膜・耳小骨)。
*2.感音器は、内耳・聴覚神経のこと。
難聴は、これらの部分に異常が生じることから起こるものなのですが、どの部分で生じているかによって症状が違ってきます。
症状には、伝音器、感音器、伝音器・感音器両方の異常を原因とした三つのタイプがありますが、聴覚障害者の大多数が感音器の異常を原因とする感音性難聴を持っていることから、ここでは、感音性難聴について詳しく触れることにします。
-感音性難聴の特徴-
感音器(内耳・聴覚神経)の異常を原因とする難聴は、「感音性難聴」といい、内耳で音が上手く処理されなかったり、音の電気信号を脳に伝える神経が上手く機能しないため、
1. 単なる「聞こえない」という音量の問題
2. 音量は普通に聞こえるが、ひとつひとつの言葉として「聞き取ることができない」という音質の問題
3. 単なる「聞こえない」だけでなく、ひとつひとつの言葉としても「聞き取ることができない」という音質・音量両方の問題
が出てきます。
残念ながら、感音性難聴に対する効果的な治療法は今のところありません。また、補聴器を装用したところで、聞こえる人と同程度の聞こえを実現することはできません。
感音性難聴の程度は個人差がありますが、その説明は次に投稿することにします。
そこで、今回は「耳が聞こえない」「耳が聞こえにくい」を引っくるめていう難聴について説明します。
-耳の構造と「難聴」-
耳の構造は、体の外の音を振動に変えて体内に伝える役割をもつ伝音器(*1.)と、体内に取り込んだ振動を電気信号に変換して脳に伝える役割をもつ感音器(*2.)に分かれますが、これらが正常に機能して初めて「耳が聞こえる」といえるのです。
*1.伝音器は、外耳から中耳にかけての各器官(外耳道・鼓膜・耳小骨)。
*2.感音器は、内耳・聴覚神経のこと。
難聴は、これらの部分に異常が生じることから起こるものなのですが、どの部分で生じているかによって症状が違ってきます。
症状には、伝音器、感音器、伝音器・感音器両方の異常を原因とした三つのタイプがありますが、聴覚障害者の大多数が感音器の異常を原因とする感音性難聴を持っていることから、ここでは、感音性難聴について詳しく触れることにします。
-感音性難聴の特徴-
感音器(内耳・聴覚神経)の異常を原因とする難聴は、「感音性難聴」といい、内耳で音が上手く処理されなかったり、音の電気信号を脳に伝える神経が上手く機能しないため、
1. 単なる「聞こえない」という音量の問題
2. 音量は普通に聞こえるが、ひとつひとつの言葉として「聞き取ることができない」という音質の問題
3. 単なる「聞こえない」だけでなく、ひとつひとつの言葉としても「聞き取ることができない」という音質・音量両方の問題
が出てきます。
残念ながら、感音性難聴に対する効果的な治療法は今のところありません。また、補聴器を装用したところで、聞こえる人と同程度の聞こえを実現することはできません。
感音性難聴の程度は個人差がありますが、その説明は次に投稿することにします。
聴覚障害者とは? [はじめに]
皆さんは、「聴覚障害者」と聞いてどのような人をイメージしますか?
おそらく「耳が聞こえず、話せない人」「手話を日常的に使う人」をイメージする人が多いのではないかと思います。この二つ以外をイメージする人もいらっしゃるのかもしれませんが・・・。
残念ながら、この二つは半分正しく半分間違いです。
「耳が聞こえない人」が聴覚障害者に分類されるのは確かですが、「耳が聞こえにくい人」も聴覚障害者に分類されます。
「耳が聞こえない人」「耳が聞こえにくい人」は、日本の全人口の約5パーセント(!)である約600万人に上ると言われていますが、国内で聴覚障害者として認定を受けているのは約35万人です。
聴覚障害者の場合、公的機関(病院・福祉施設など)で実施される聴力検査で難聴と診断された後、身体障害者手帳の申請・交付という一連の手続きを経ることで聴覚障害者として認定されますが、難聴の程度によっては聴覚障害者として認定されないことがあります。
特に、難聴の程度が軽く、聞いて話すのに少々不便を感じる「耳が聞こえにくい」程度のレベルでは聴覚障害者として認定されないことが多々あります。
この「耳が聞こえにくい」人は意外と多く、聴覚障害者全体で見た場合、「耳が聞こえない」人より高い比重を占めるのではないかと思っています。
聴覚障害者の多くは、補聴器を日常生活で装用していますが、「耳が聞こえない人」と「耳が聞こえにくい人」では、補聴器を装用する目的が異なります。
本来、補聴器の役割が「聞こえを補う」ものであり、「完全な聞こえを実現する」性能を備えていないため、「耳が聞こえない」人は補聴器を装用しても全ての音・声が聞こえるようになりません。
よって、次の目的で装用されていることが多いように感じます。
1. 特定の音(危険音など)を聞くことで自分の身を守る (※1.)
2. 自分が聴覚障害者であることを示す (※2.)
3. 会話の補助手段 (※3.)
※1. ただし、特定の音が全て聞こえるとは限りません。私の場合、車・自転車のブレーキ音が聞こえないので、道を歩いている時は後ろから車や自転車が急激なスピードでぶつかって来ないかヒヤヒヤしています。
※2. 補聴器を隠していない人のみ。
※3. 補聴器を通して音を耳に入れることで、話し手の唇の動きを読み取り易くします。
このため、「耳が聞こえない人」と話をする際は、できるだけ口をハッキリと開け、適度な速さで話してください。
100パーセントとはいきませんが、6-8割は読み取ってもらえるはずです。
一方、「耳が聞こえにくい人」は、自分が聴覚障害者であることを他人に知られることに対して抵抗感を持っている人が多いため、補聴器を完璧に使いこなすことで、日常会話をスムーズに進めようという狙いがあるように感じます。
ただし、話し手がボソボソとした話し方をする人の場合、聞き取りにくいようです。
「耳が聞こえない人」と話をする際は、「耳が聞こえない人」同様、できるだけ口をハッキリと開け、適度な速さで話してください。
・・・補聴器を装用している聴覚障害者について触れてきましたが、「耳が聞こえない人」の中には補聴器を装用していない方もいらっしゃいます。
補聴器を装用しても全然音が入らないからです。
そのような方は人工内耳(聴神経に直接電気を流して音を聞かせる医療機器)を耳の中に埋め込む手術を受けるか、または、補聴器・人工内耳の両方を諦めてコミュニケーション手段は手話に頼るという方法を採っています。(先述した「手話を日常的に使う人」がそうです。)
これで、聴覚障害者についての説明は終わります。
おそらく「耳が聞こえず、話せない人」「手話を日常的に使う人」をイメージする人が多いのではないかと思います。この二つ以外をイメージする人もいらっしゃるのかもしれませんが・・・。
残念ながら、この二つは半分正しく半分間違いです。
「耳が聞こえない人」が聴覚障害者に分類されるのは確かですが、「耳が聞こえにくい人」も聴覚障害者に分類されます。
「耳が聞こえない人」「耳が聞こえにくい人」は、日本の全人口の約5パーセント(!)である約600万人に上ると言われていますが、国内で聴覚障害者として認定を受けているのは約35万人です。
聴覚障害者の場合、公的機関(病院・福祉施設など)で実施される聴力検査で難聴と診断された後、身体障害者手帳の申請・交付という一連の手続きを経ることで聴覚障害者として認定されますが、難聴の程度によっては聴覚障害者として認定されないことがあります。
特に、難聴の程度が軽く、聞いて話すのに少々不便を感じる「耳が聞こえにくい」程度のレベルでは聴覚障害者として認定されないことが多々あります。
この「耳が聞こえにくい」人は意外と多く、聴覚障害者全体で見た場合、「耳が聞こえない」人より高い比重を占めるのではないかと思っています。
聴覚障害者の多くは、補聴器を日常生活で装用していますが、「耳が聞こえない人」と「耳が聞こえにくい人」では、補聴器を装用する目的が異なります。
本来、補聴器の役割が「聞こえを補う」ものであり、「完全な聞こえを実現する」性能を備えていないため、「耳が聞こえない」人は補聴器を装用しても全ての音・声が聞こえるようになりません。
よって、次の目的で装用されていることが多いように感じます。
1. 特定の音(危険音など)を聞くことで自分の身を守る (※1.)
2. 自分が聴覚障害者であることを示す (※2.)
3. 会話の補助手段 (※3.)
※1. ただし、特定の音が全て聞こえるとは限りません。私の場合、車・自転車のブレーキ音が聞こえないので、道を歩いている時は後ろから車や自転車が急激なスピードでぶつかって来ないかヒヤヒヤしています。
※2. 補聴器を隠していない人のみ。
※3. 補聴器を通して音を耳に入れることで、話し手の唇の動きを読み取り易くします。
このため、「耳が聞こえない人」と話をする際は、できるだけ口をハッキリと開け、適度な速さで話してください。
100パーセントとはいきませんが、6-8割は読み取ってもらえるはずです。
一方、「耳が聞こえにくい人」は、自分が聴覚障害者であることを他人に知られることに対して抵抗感を持っている人が多いため、補聴器を完璧に使いこなすことで、日常会話をスムーズに進めようという狙いがあるように感じます。
ただし、話し手がボソボソとした話し方をする人の場合、聞き取りにくいようです。
「耳が聞こえない人」と話をする際は、「耳が聞こえない人」同様、できるだけ口をハッキリと開け、適度な速さで話してください。
・・・補聴器を装用している聴覚障害者について触れてきましたが、「耳が聞こえない人」の中には補聴器を装用していない方もいらっしゃいます。
補聴器を装用しても全然音が入らないからです。
そのような方は人工内耳(聴神経に直接電気を流して音を聞かせる医療機器)を耳の中に埋め込む手術を受けるか、または、補聴器・人工内耳の両方を諦めてコミュニケーション手段は手話に頼るという方法を採っています。(先述した「手話を日常的に使う人」がそうです。)
これで、聴覚障害者についての説明は終わります。






